佑樹は続き部屋にある資材置き場から、スクリーンとスライドを出してきて、テーブルの上に置いた。

「…生徒会長も大変だな?」

「はは。会長とは名ばかりの雑用係だよ…」

「…ふぅん、てか、何で俺の名前知ってたの?」

美里と浮気してるもんな、知ってて当たり前。

「そんな頭してるの君位だよ?いくら頭髪に特定の規則が無いとはいえ、もっと高校生らしくしなよ?」

「…はは。さすが生徒会長…」

「それに、俺の彼女の隣の席だろ?今日二人で話してるの見たよ…」

「ああ…あれね?勉強教わってたの、奏の説明わかりやすい、あんたの彼女だったんだ?」


さりげなく奏の名を呼ぶ俺に、佑樹がピクリと飯能したのを俺は見逃さなかった。


今のはマズかったかな?


「うん。中2の頃からね…」

「…3年?…随分長いね?俺は最高2ヶ月位だよ、はは。それ、持ってくの手伝うよ?一人じゃ大変だろ?」

俺はテーブルのそれを指差した。

「マジで?」

「うん。彼女に勉強教わったし、お礼…」

お礼なんかするか、ボケ。

奏逃がす為に仕方なくだ、仕方なく!

奏、も少し待ってろ、くそ佑樹をここから追い出すから。

そしたら奏もここから出れるだろ?

もうこの部屋も使えないな、他にいい場所探さないと…


暗幕をチラリと見る。

……奏。
もう少し待ってて?


「行こうか?生徒会室ってどこだっけ?はは」


俺は重いスライドを抱えた。


「ありがとう、助かるよ」


佑樹はスクリーンを肩に担いでドアを開けた。


俺もその後に続いて視聴覚室を出る。

佑樹は鍵をかけると、廊下を歩き出した。

……ホッ。
追い出し作戦成功。

奏、しばらく経ったら、そこから脱出してくれ。

それにしても佑樹の奴…
バカ静並のナイスタイミング。

奏にキスし損ねた。
…許せん。

もっと許せないのは奏を叩いた事。
再び怒りが込み上げてきた。

先を歩く佑樹の背中を睨み付ける俺。

奏は何でこんな奴と付き合ってるんだろ?
浮気してるし、さらに叩かれたり…


そこまでして、奏が佑樹と付き合ってるの事に、俺はまだ気付く事が出来なかった。