休み時間の出来事を思い出した。


「…あいつが…佑樹がやったのか?」

奏の手をどかし、腫れた頬を触ると、ほんのりと熱をもっていた。

「…昨日、ちょっと…ケンカしちゃって…」

昨日ってあの後だよな?
それ以外時間もなかったはず…

俺と一瞬に居たからか?


「…ごめん…俺のせいだな?」

「違うよ?佐野君のせいなんかじゃないよ?」

「いや、俺のせいだ…」

…あのヤロー…

どんな理由であれ、女に手を上げるなんて、サイテーな奴。

怒りが込み上げてくる。

「…ホントに違うの、佐野君、私が佑樹の事…怒らせちゃったから…だから、全然佐野君のせいとかじゃないんだよ?」


必死になって言い訳する奏にこれ以上何も言う事が出来ない。

だけど、少なくとも俺が関連している事は確かだ。

多分昨日一日ずっと一緒に居たから、その事が原因である事に違いないだろう。

軽率だった。

浮かれていた自分も許せないが、もっと許せないのは佑樹の奴。

俺はギュッと奏を抱きしめた。

「…痛かっただろ?こんなに腫れて…」

「…ううん、もう痛くないよ…」


くそ佑樹め。

奏を叩くなんて、何考えてやがる。

奏の事が好きじゃないのか?

あの浮気ヤロー…

…奏、昨晩泣いたんだろ?
だから目も腫れているんだな?


奏に回した腕を離し、肩に手を置き、腫れている頬にキスすると、くすぐったそうに肩を上げた。

顔を近付け唇に触れようとした瞬間、


−ガチャ!


ドアを引く音がした。

幸い鍵をかけていたため開かれる事はなかった。

…はずだったのだが、カチャカチャと鍵穴に鍵を差し込む音がした。


「ヤバイ、隠れてて」


俺は奏を引き寄せ窓際の暗幕の中に隠した。

ドアが開き、そこに居たのは、

「あれ?人がいた?」


佑樹だった。


「…君…確か…佐野君だよね?」

「…そうだけど?」

「何でここに居るの?」

「…飯食って昼寝してた、あんたこそ何でここに?」

「生徒会の会議に必要な物取りに来たんだよ」


そう言って浮気ヤローは爽やかに笑いやがった。