昼休みになった途端に俺はコンビニの袋を持って、教室を出て視聴覚室へと向かう。
早めに行かないと、また美里に捕まる。
飯は視聴覚室で食うつもり。
いつも適当に人気がない所で飯を食うのが日課な俺。
食ったら直ぐに昼寝するからだ。
夜は毎日ほぼバイトな俺の貴重な睡眠だ、誰にも邪魔されたくない。
でも今の俺には、奏と過ごす少しの時間の方が大事だった。
辺りをキョロキョロと見回し、誰にも見られていないか確認してから視聴覚室の中に入る。
長テーブルに寄り掛かり、コンビニおにぎりを取り出し、お茶を片手に食べ始める。
味気無い俺の昼飯。
唯一食事と言えるものは、バイト先のまかない位だった。
食べ終わりお茶を一気に飲み干し、長テーブルにゴロリと横になる。
食べてから直ぐに横になると、牛になるそうだ。
母さんがよく言ってた。
でも俺は、いまだ牛になった事はない。ははは。
視聴覚室のドアが静かに開き、奏が顔を覗かせた。
中に入ると後ろ手に鍵を閉めている。
俺は起き上がり、テーブルから降りると、真っ直ぐ奏の方に近づくと、そのまま奏をギュッと抱きしめた。
…ああ。
奏の温もり、約半日ぶり。
「…具合、大丈夫?」
「…うん。大丈夫」
俺の腕の中で小さく頷く奏。
…可愛すぎる。
…キスしたい…
俺は奏の顔に手をかけ、マスクを外そうとしたら、奏は急に顔を背けた。
…何で?
軽くショックなんですけど?
「…風邪…移るといけないから…」
奏の風邪ならお金出してでも買うぞ?俺は?
なんか俺、キャラ崩壊しかけてね?
その位、奏の言動ひとつひとつが、俺の心臓を射ぬくのだ。
「…移ってもいいよ」
俺がマスクを外すと、奏は途端にうつ向いた。
…まだ抵抗するか。
奏の顎を軽く摘まんで上を向かせる。
「……どうしたの?ここ?…」
奏の右頬が赤く腫れていた。
「…何でもないよ?昨日、ちょっと…ね…へへ」
奏は頬を押さえて笑って見せた。
だからマスクしてたのか?

