医師の勧めもあって、念の為にレントゲンを撮った方がいいとの事で、試合経過を逐一知らせる事を約束して、コースケは高田先生と共に病院に行く事に。
後の事を高田先生から任されてしまった俺は、控え室で後輩達にそれを伝えた。
明らかに動揺の色を隠せずにいる後輩達。
「お前達は試合に集中して勝つ事だけを考えろ」
当然だけど、そんな当たり前の事しか言えない。
でもそれ以外に他に言う言葉が浮かばない。
「コースケが居ないからって、それだけで負けるような練習してきてないだろ?」
互いに顔を見合わせて、頷き合う後輩達の表情は次第に落ち着きを取り戻し、次の試合に向けての決心が固まってきたようで、俺はさらに続けた。
「お前等なら出来る」
全員の視線が俺に注がれる。
「勝ってこい」
その時同時に試合終了のアナウンスが流れてきて、リョータが立ち上がると他の部員達も同じく立ち上がり自然と円陣を組む。
「次も絶対に勝つぞ!!」
「ハイッ!」
そうだ。
それでいい。
絶対に勝つ。
その気持ちをひとりひとりが持つ事が一番大事な事だ。
ここには居る事が出来ないコースケの方がお前ら以上にその気持ちは人一倍強い筈だから、そんなコースケの分まで部員一丸となって全力で頑張ってほしいと思う。
ひとりじゃバスケは出来ない。
だかこそ、その気持ちが大事なんだ。
「佐野先輩」
「なんだ?リョータ」
「ベンチに居てくれませんか?」
「ああ。そのつもりだ」
「俺達が勝つところ、いちばん近くで見ていて下さい」
そう言うコースケの表情が、勝つ事だけを考えていた数年前のあの頃の自分を見ているようで、俺にまでコースケ達の熱い思いが伝わってくる。
大丈夫だ。
お前等なら必ず優勝出来る。
それを見届ける事がお前等に俺がしてやれる最後の事だから。
全力で闘ってこい。

