「コースケ。先生の言う通りだ。お前はベンチに下がれ」

「佐野先輩まで……、そんな事言うんですか?先輩なら……
俺の気持ち、わかってくれるって、思ってたのに…」

「ああ。わかってる」

「だったら!」

「そんな状態で試合に出たって、他の仲間に迷惑かけるだけだ」

「っ……、でも…スリーシューターは……俺しか、居ません…」

「マサトが居る」

「うぇっ?俺ですか?!」


驚いたのかマサトは自身を指差す。


「そう。マサト、お前」

「そっ……そそそんなっ、むっ、無理ですっ」


マサトならコースケの代わりを努める実力は十分にある。


早朝にひとり、毎日のように500本のスリーを打っていたマサトにはそれが出来る程。


「マサトはまだ、圧倒的に試合経験が足りてません。正直、マサトに任せる位なら、俺は無理矢理にでも試合出ます」

「足がただの捻挫じゃすまなくなってもいいのか?」

「それでもいいです!今日だけでもっ……、後はどうなったってかまっ」


−−バシッ!


気付けばコースケの頬を思いきり打ってしまっていた。


コースケは驚き、頬を押さえて俺を見上げていた。


「…お前が、そんなにしてまで試合に出たとして、他の仲間はそうなる事を望んだりしてない」

「…………」

「お前ひとりでここまでやってこれた訳じゃないだろ?」

「…………」

「もっと仲間を信じろ」

「…………」

「マサトなら必ずやれる。俺が保証する」

「………先輩…」


見上げるコースケの頭に手を置き、くしゃりとひとつ撫でる。


「バスケ部全員で優勝するんだろ?」


そう言ってコースケに笑ってみせた。