医務室に控えていた医師の話によると、骨に異常はないらしいと言う事で、取り合えず胸を撫で下ろす。
試合中の動きを見れば、恐らく捻挫であろうと言う事はわかっていたけど、本当に骨折していたとしたら、立つ事さえ出来ない筈だから。
医師からそれを聞かされるまでは、内心不安だった。
さっき見た時よりも、コースケの足はさらに晴れていて、今はアイジングでの応急処置中。
少し後から俺達より遅れて医務室にやって来た高田先生は、腕組をし、難しそうな表情で、その経過を見守っていた。
そんな高田先生が徐に口を開いた。
「……コースケ。お前はベンチに下がれ」
高田先生のその言葉にコースケは。
「……嫌です」
「その足で試合をやらせる訳にはいかない」
「俺、出ます」
「お前の気持ちはよくわかる、だけど…」
「絶対に出ますっ!」
「……コースケ…」
わかってくれ。と無言でコースケを見下ろす先生と、それには従わないと言わんばかりに、高田先生を睨み返すコースケ。
「……テーピングして、ガチガチに固めたら、後二試合位は大丈夫です。だから……、お願いします。先生、やらせてください」
「しかしな…」
「お願いしますっ!俺っ、やっとここまで来たんです。ずっと憧れてた、佐野先輩と同じ舞台に立てたんです。どうしても優勝したいんです!」
どちらも譲れない思いがある。
高田先生の立場は教員で引率者で。
コースケ達三年はこれが最後の全国大会。
だけど……
たかが捻挫と言えど、さらに悪化して、取り返しのつかない事になってしまう可能性だって十分にあり得る。
そんな状況で試合に出たって、周りのチームメイト達にもその影響が出てしまう。
そんな中で冷静な判断でプレーが出来るとは到底思えない。
コースケの気持ちは痛い程によくわかるけど……

