「大丈夫です!俺やれます!いや、やりますっ!」


シンと静まり返った控え室の中で、コースケの声だけが響く。


「その足じゃ無理だ」

「無理じゃないっ!大丈夫ですっ!」


コースケが真っ直ぐに俺を見つめてきて、そんな俺とコースケのやり取りを固唾を飲んで見守る後輩達。


「……取り合えず、医務室に行こう。マサト、手貸せ」

「え?あっ…は、はいっ!」


マサトの手を借りて、コースケを両脇から抱えて立ち上がらせる。


「リョータ。先生来たら伝えて」

「はい……」


控え室を出ようとドアを開けると、振り向きざまコースケは。


「リョータ!俺試合出るからな!」

「……コースケ」

「絶対に出るからな!」


そう言い残し、両脇から抱えられながら控え室を出て、通路を医務室へと向けて歩いていると、コースケが俺に。


「……なんで、わかったんすか?」

「ファウルされた時……、そこからお前の軸足、左に変わっただろ?」

「え?そうだったんですか?全然……、気付きませんでした。俺…」


マサトが言うのも無理はない、あれだけ集中してて、スリーも確実に決めていたコースケが、まさか怪我してるなんて、誰も気付けないのは当然だ。


「上手く…誤魔化せてたのに、なんで気付くんすか……、先輩は…」


うつ向き、そう呟くコースケをマサトと運びながら、無言で医務室へと向かう。