軽くノックをして、控え室のドアを開け顔を覗かせると。


「あっ!先輩!一回戦。突破です」


リョータ他、後輩達の視線が一斉に注がれた。


「お疲れ、よく頑張ったな。いい試合だった」

「この調子で次も勝ちますよ」


コースケがそう言って、俺に向けてVサイン。


「コースケ先輩、今日は神掛かってます。スリーの命中率凄いですもんね」


興奮気味にそう言うマサトの前を通り過ぎて、長椅子に腰掛けているコースケの前に俺はしゃがみこんだ。


「コースケ、バッシュ脱げ」

「え?なんすか?いきなり…」

「いいから、脱げ」


そう言ってコースケの右足首を掴んだ途端。


「いっっ!!」


うめき声を上げるコースケに、控え室は一瞬で静まり返った。

「やっぱり……」

「どうした?コースケ?」


リョータが怪訝な表情でコースケに問い掛けるけど、コースケは慌てた様子で。


「なっ、何でもねーよ!」


そんなコースケのバッシュを俺は無理矢理脱がせた。


「うっ!」


再びうめき声を上げるコースケの踝(クルブシ)辺りが、赤黒く腫れ上がっていた。


「コースケ……お前…」


皆の視線がコースケの足に注がれる。


「多分、捻挫……、リョータ、先生は?」

「……え?…あ…、先生は今…車に忘れてきた…携帯を取りに…」


「こいつ医務室連れてくから」


俺はコースケの腕を取り立ち上がる。


「大丈夫ですからっ!」


大声を出しながら、俺の手を振り払うコースケ。