「ついにここまで来たぞ!」

「「「「「ハイッ!」

「俺達が負ける訳がない!」

「「「「「ハイッ!」

「絶対優勝!!」

「「「「「ハイッ!!!」

「よしっ!行くぞっ!!」

「「「「「オオーーーッ!!!」



リョータを中心に円陣を組んで、気合いを入れる後輩達の姿が、開いた控え室のドア越しに見えて。


試合前に激を入れてやろうと思ってここまで来たけど、ここまで勝ち進んできた後輩達にその必要は無さそうで、踵を返して来た道を戻ろうとしていたら、控え室のドアが大きく開かれた。


「あっ!佐野先輩!」


俺を見つけたリョータの声がして。


「えっ?先輩?」


次にはどやどやとバスケ部員達が控え室から出てきた。


「佐野先輩!来てくれたんですね!」


近付いて来るリョータに続いて、他の部員達も俺目掛けて走り寄ってくる。


「うん。来てやった」

「奏さんは?」


リョータが俺の後方を首を傾げて覗きこむ。


「……奏は、来てないよ…」

「え?マジすか?」

「大事な用事があるらしい…」


咄嗟に出た嘘は、1日に何度も襲ってくるあの感覚を胸に呼び戻すけど。


わざわざこいつら達に本当の事を話す必要もないし、動揺させる訳にはいかない、今はただ試合に集中して欲しい。


「そうですか……残念です」

「俺ひとりじゃ不服みたいだな?」

「いえっ、そんな事無いです。嬉しーっす」

「ホントに、よくここまで勝ち抜いてきたな」


リョータの後ろの後輩達を見渡し、俺はそう言った。


「後は全力を出しきってやるだけだ。頑張れよ」


「「「「「ハイッ!」


バスケ部員達の大きな声が、控え室の通路に響いた。