………アメリカ?
「アメリカって……旅行にでも行くの?佐野君…」
私の質問に佐野君は力なく笑うと。
「いや、旅行じゃない。留学…」
「……留…学…」
佐野君の口から出た言葉を頭の中でまとめようとするけど、中々思うようにいかない。
アメリカ?
留学?
佐野君が?
ぐるぐると頭の中で回るワードを自分なりに整理していく。
……佐野君がアメリカに留学するって事?
たったそれだけの事を頭の中で理解するのに、随分と時間がかかってしまった。
「……交換留学?とか?」
私達の学校では数ヶ月単位の交換留学制度がある。
もしかして、佐野君もそれなのかな?
「違うよ…、単身留学……学校もやめる…」
「学校……、やめちゃうの?佐野君…」
「うん。二学期から、もう来ないよ…」
……え?
何で急にそんな事になってるの?
佐野君、そんな事、一言も言わなかった……
……いや。
私が知っていて忘れているのかも……
「………私は、その事、知ってたのかな?」
「うん……知ってたよ…」
知ってた?
私、そんな大事な事を知っていて忘れてしまっていたの?
「………そっか、知ってたんだ」
「うん」
「あ……、はは。私…そんな大事な事まで、忘れてしまってるんだね…」
「大した事じゃないから…」
「そんな事っ!」
私はムキになって、殆ど無意識に大きな声を出してしまった。
だって、佐野君が居なくなるって……
そんな事……
考えてもみなかった。

