何時までも出入り口で立ち話も何だから、私達は病院に戻る事に。


マサキ君はリハビリの時間だからと途中で分かれ、私と佐野君二人で病室に向かっていた。


頭の中では何か話さなくちゃと思っているんだけど、緊張してるのか、変に意識してしまって、言葉を発する事なく、黙々と足を進めていた。


「…怪我の具合は…どう?」


佐野君がそう言って沈黙を破ってくれたから、私は。


「あっ、あのねっ、骨もほぼ綺麗に繋がってね、頭の包帯ももう直ぐ取れそうなんだよ、それとね、あっ!佐野君ピアス、ピアス落としてるよね?私拾って大事にしまってるよ」


頭の中で思い付いた事を一気に捲し立てた。


「ピアス……?」


佐野君は左耳に手を触れて、そこにピアスがあるかどうか確認しているみたいで。


「……あ。一個無い…」

「もしかして、今まで気付かなかったの?」

「…うん……ごめん」

「何で謝るの?」

「いや…、何となく…」

「赤くて綺麗な石だよね?佐野君によく似合ってる」

「珊瑚なんだって、これ…」


佐野君は耳を摘まんでみせた。


「へぇ、そうなんだ?珊瑚ってそんなに赤いんだね」

「……そうだね」


……どうしちゃったんだろ。
佐野君…
どこか、元気が無いみたい…


やっぱり体調が悪かったのかな?


私はずっと快適な空調の効いた病院にいるからわからないけど、今は真夏だし、夏バテでもしたのかな?


少し、顔色も悪いみたいだし……


「……諦めが、悪いよな…もしかしたらって、気持ちも…、少しだけ、あったんだ…」

「え……?」

「いや、何でもない…」


そう呟いて私の少し前を歩く佐野君の背中はいつもより小さく見えて、ホントに元気がなくて、何か言葉を掛けてあげようにも、何を言ったらいいのかわからなくて、私は再び口を閉じた。