「奏ちゃん、元気そうでよかったわ…」


おばあさんは近づいてきて、私の手を取りそう言って、握られた手に少しだけ力を込めた。


「……あの…」


見知らぬおばあさんに戸惑っていると、洋介さんが。


「ばあちゃん、奏ちゃん、固まってる」

「え…?ああ。ごめんなさいね?奏ちゃん……、元気な姿を見たらおばあちゃん嬉しくて、つい…」


おばあさんの笑顔が不意に寂しそうなものに変わってしまって、握られていた私の手をゆっくりと離してくれた。


「奏ちゃん、こんにちは」

「こんにちは、洋介さん」

「ごめんね、驚かせて、俺のばあちゃんだよ」


洋介さんの、おばあちゃん?


「あ…、洋介さんのおばあちゃんですか?初めまして、私、奥村奏です」


私はおばあちゃんにペコリと頭を下げた。


「…ホントに……、覚えてないのね…」

「え……?」

「ばあちゃん」

「あ…、そうだったわね…」


もしかして私は洋介さんのおばあちゃんとも知り合いだったんだろうか?


「あの……、ごめんなさい。私…」

「わかってる。洋介から聞いたわ、だから、気に病まないでね?もう怪我の具合は落ち着いてきたかしら?」

「はい。もう随分よくなりました…、あの…すみません、私今から検査なんです。でも直ぐに終わりますから病室で待っててもらえますか?」


せっかくお見舞いに来てくれたのに、今ここで話し込む訳にもいかないから、私はおばあちゃんにそう言った。


「あら。そうなの?来る頃合いが悪かったかしら…、また改めて出直した方がいいわね?」

「いえ、ホントに直ぐに終わりますから。マサキ君も洋介さんに会えると喜ぶと思います」


洋介さんにもそう言って、二人に病室へと先に行っていて欲しいとお願いした。


「うん。病室で待ってるから、奏ちゃんは検査に行ってきな?」

「はい。直ぐに戻ります。待ってて下さいね?」


二人にそう告げて、私は検査室へと急いだ。