マサキ君には私が教えて、まりあちゃんはマサキ君に教わる。
そうやって二時間程勉強会をしていたら、まりあちゃんが眠そうに目を擦り出した。
「まりあちゃん?眠いの?」
「……うん…」
まりあちゃんはまだ8歳。
二時間も集中して勉強するのは辛かったみたいで、疲れてしまった様子。
私が8歳だった頃は、こんなにじっと集中して勉強なんかしていなかった筈。
まりあちゃんに無理をさせてしまったみたい。
「ごめんね?まりあちゃん。気が付かなくて、少しお昼寝しょうか?」
「…うん」
私のベッドで勉強していたまりあちゃんを自分のベッドへと促し、お布団を掛けてあげる。
するとまりあちゃんはほんの数秒で寝息をたて始めた。
「のび太並みの寝つきのよさだな…」
「集中して勉強してたから、疲れちゃったんだよ。マサキ君も疲れたでしょ?今日はここまでにしとこうか」
「うん。そうだね、小腹も空いたし、俺、売店でなんか買ってくる。奏さんは?なんか食いたいモンある?」
勉強して頭を使ったから正直、甘いものが食べたくなっていた。
「チョコ食べたいかな?私も一緒に買いに行くよ」
そうしてマサキ君とふたり病室を出ようとしていたら。
「奏ちゃーん。検査の時間ですよー」
前田さんが病室に入ってきた。
「え?検査?」
「やだ奏ちゃん、忘れてたの?昨日言ってたじゃない。今日はレントゲン撮るって」
………あ。
そう言えば……
「すみません……、忘れてました…」
「意外とうっかり屋さんなのね?奏ちゃんって」
「………」
その通りだから何も言えない。
「奏さん、チョコ買ってきといてやるから、検査行ってきなよ」
「うん。ごめんね?マサキ君、ありがとう」
お財布からお金を取り出しマサキ君に渡そうとしたら。
「いいよ、チョコ位オゴらせてよ。勉強のお礼」
「そんな、いいよ、お礼なんて…」
「いーからいーから。早く検査行ってきなよ」
そう言ってマサキ君はひとりで病室から出ていってしまった。

