……どうして?
俺が屋上で告白した時、一緒に居たいって言ってくれたよな?
俺はそれで奏の気持ちが自分と同じものなんだと思っていたんだけど、奏は違ったのか?
それとも、ホントにただの浮気のつもりだったのか…?
いや、それは絶対に無い。
そんな事、ある訳がない…
「お前…、ボール持った途端に表情まで変わってたよ…」
「…………」
「迷うなよ……、皆から望まれてるんだろ?」
望まれてる……
それはわかってる。
……けど。
俺と過ごした日々を奏が忘れてしまっても、俺は…
「もう、決めた事なんだよ、アメリカへは行かないって」
そう。
俺はアメリカには行かない。
この先もずっと奏と一緒に居たいから。
「…………」
ヨースケは暫く無言でじっと俺の顔を見ていたけど、それからフッと力が抜けたような表情で笑うと。
「お前にはお前なりの考えがあるんだってわかってる。でも…、さっきのお前のプレーを見てると、どうしても納得でない…」
ヨースケは膝の上に置いていたボールを片手で持ち、それを俺に投げてよこした。
「……正直。お前が羨ましくてたまらないよ…」
「……洋ちゃん」
「俺は俺のフィールドで全力でやっていこうって思ってる、けど、もしも足を失わなかったらって考えると…、こんな事考えても仕方ないってわかってるし、ただのひがみにしか聞こえないだろうけど、それでも……」
ヨースケは車椅子ごとくるりと背を向けた。
「……俺だって…、自分の足で全力で走りたい…、思いきり跳びたい…」
大きな筈のヨースケの背中が少しだけ小さく見えた。
……洋ちゃん。
ごめん……
俺はヨースケが欲しくてたまらないものを持っているかも知れないのに、それを実現する事を避けているんだ。
何で俺なんだろう?
何でヨースケじゃないんだろう?
ヨースケなら、俺が想像もつかないような、とてつもなく凄いプレイヤーになれるのに……
「こんな事、お前に向かって言ってしまっている自分が、今…、たまらなく嫌だよ…」
洋ちゃん……
俺だって同じだ。
自分が嫌でたまらないよ。
だから、洋ちゃんがそんな事で気に病む事なんかないんだ。
皆の期待に応えられない自分勝手な俺が全て悪いんだから……

