「そんなのは、嘘だ…」

「え……?」

「ボール持っただけで、あんなにも光景が浮かぶ程のプレーをしておいて、何でそんな事言うんだよ」


怒ったような低い声を出すヨースケ。


「洋ちゃん?」


何を怒ってるんだ?
なんか俺、悪い事言ったか?


「お前…、アキラの前でも同じ事言えるか?」

「……あ」

「もう十分だなんて……、そんな事言うな」


……軽率だった。


昨日の今日じゃあるまいし、ついさっきの今だろ?


「洋ちゃん、俺、そんなつもりじゃ…」

「わかってる、わかってるけど…、アキラの事、考えたら……、お前には関係無い話だったな…」

「関係無くないよ……、俺……、そこまで気が回らなくて、ごめん…」

「いや、考えてみればそれが普通だ、俺達が特殊な世界に居るだけだから、それを何も知らないお前にわかってもらえる筈もないよな…」


確かに。


それは普通に生活していれば、知ることの無い世界かも知れない。


でも俺は知ってしまった訳だし、関係無いと言われた事に、少しだけ寂しさを感じてしまった。


これはとてもデリケートな問題で、何を言っても、それは言い訳に聞こえてしまうような気がして、それ以上の言葉が続かなかった。


「でも、これだけは言わせてくれ。様々な事情があるかも知れないけど、俺達がこの先どんなに頑張っても、行き着く事の出来ない所にお前は手が届きそうなんだ」

「…………」

「さっきも言ったよな?この先何が起こるかわからないって」

「……うん」

「もう二度とやって来ないチャンスかも知れないんだぞ?」

「わかってる」

「それでも…、行かないのか?」

「うん……、行かない」

「奏ちゃんがそれを望んでてもか?」


奏が……?
それを望んでる?


「……奏が、そう言ったの?洋ちゃん」

「ああ。恩師である先生も、お前の家族も、勿論自分も、そうなることを望んでるって」


どう言う事だ?
先生にも父さんにも行かないって言ってるのに……


奏は俺をアメリカに行かせたがってたのか?


何でだ?


俺がアメリカに行ったりしたら……


俺達、離ればなれになるんだぞ?


奏は……、それでもいいのか?