「……いつ、そんな話したの?」

「いつだったかな…、あ。お前らが夏休みに入って直ぐ旅行に行った時だ、そん時に電話で話した」


拓也達を連れて実家に帰った時だ。


「お前にとっていい話があるって聞いた。でもお前は迷ってるって…」


アメリカ行きの事を言ってるんだろうか?


「それって、バスケの話……?」

「当たり前だ。他にどんな話があるんだ」


その日にアメリカ行きをキッパリと断った筈なのに、何で奏はヨースケにそんな話をしたんだろうか?


………確かに…


その日まで迷っていた自分が居たことは、俺もわかっている。


ヨースケに再会して、再びバスケに傾き始めていたのは、否定出来ない。


でも、俺なりに真剣によく考えて出した結果は、バスケよりも、奏と一緒に居ること。


その結果に俺は後悔なんかしてないし、高田先生にもキッパリと断った。


それなのに……


奏は俺がアメリカに行きたがってると勘違いしてる?


でも、俺は奏には初めからアメリカには行かないって言った筈なんだけど……


今さら何故そんな話をヨースケにしたんだ?


「洋ちゃん……その話…、何でもないから。奏の、勘違いだから」

「勘違い?」

「うん。勘違い……」

「そうか?随分具体的な話だと思ったんだけどな…」


……具体的って。
そんな事まで話したのか?奏は……


「アメリカなんて…、行けないよ…」

「は?アメリカ?!」


ヨースケは驚き、俺を見上げてきた。


「お前、アメリカ行きの話があったのか?」

「え?……うん。奏から聞いたでしょ?」

「そこまでは聞いてねーよ!何?アメリカって?ちょっ、詳しく話せ!」


詰め寄るヨースケに俺は後退り。


「でも、終わった話だから…」

「いーから話せ!」


車椅子ごと俺に突進してきそうな勢いのヨースケに、俺は渋々話し出した。