再び車に乗り、見慣れない街並みを眺めながら走っていると、フェンスに囲まれたバスケットコートが見えてきて。
直ぐ横の駐車場に車を停めて、ヨースケはトランクからボール取り出した。
「佐野。コレ持ってて」
ヨースケが俺にボールを放ってよこし、俺はボールを受け取る。
「……こんな所に野外のコートがあるなんて知らなかった」
受け取ったボールを両手でくるくると回しながら、フェンス内のコートを眺める。
「お前らの学校から結構近いんだぜ?」
「ふーん。そうなんだ…」
他の利用者居なくて、照り付ける陽射しに反射されたバスケットゴールのネットが微かに風に靡いていた。
そう言えば野外のコートでプレーした事はないな……
どんな感じなんだろ?
「お前靴は?……と、スニーカーだからいいか」
ヨースケは一人呟き、俺はそんなヨースケの言葉は聞こえず、コートの中を見つめていた。
「よし。行くぞ佐野」
「え?……あ。うん」
ヨースケはいつの間にか車椅子に座っていて、俺は急に低くなったヨースケの目線に一瞬戸惑ったけど、ヨースケは一人でさっさとコートの入り口まで車椅子を走らせた。
ボールを持って、俺もその後を追う。
フェンス内に入り、ヨースケは上半身のストレッチを始めた。
手持ち無沙汰な俺は、ボールを地面に落として弾いてみた。
フローリングとは違う、若干曇ったような、弾かれたボールの音に、少しだけ気持ちが躍る。
タンタンタン。と、その場でボールを弾いているとヨースケが。
「お前も、少しアップしとけば?」
「……うん」
ヨースケの一言に身体が動き出す。
ゆっくりと走りながらドリブルでコート内を回る。
タンタンタンと俺の掌で弾かれたボールは、また俺の掌に。
徐々に速くなる足の動きと胸の鼓動。
タンタンタンタンタン……
ドクドクドクドクドク……
横から腕が延びてくる。
身体を低く、片足を軸に、そのまま身体を反転させる。
今度は前からガードが一枚。
周りにはパス出来ない。
激しくボールを地面に叩きつけ、クロスオーバーレッグスルー。
ガードを避けて、落ちてくるボールを空中でキャッチする。
掴んだボールをドリブルで、再びゴールに向かって走る。
ゴール下にはセンターが両手を高く上げている。
スリーを放つフリをするとそいつは高くジャンプした。
その瞬間俺はゴールに向かって走り込む。
そいつが降下し出した所で俺は大きく跳ぶ。
ボールを右手で掴んでリングの上からボールを押し込む。
−ザシュッ!
ネットを揺らし、ボールは地面で跳ねた。

