約30分程車を走らせると、ヨースケはある住宅街のパーキングに車を停めた。
「佐野、お前も来いよ」
ヨースケがそう言うから、車から降りて俺もヨースケの後に着いて行く事に。
パーキングから300メートル程歩くと、ヨースケは二階建ての住宅のインターホンを押した。
『はーい。どちら様?』
「洋介です」
『あら、洋介君。どうぞ?入ってきて』
「はい。連れが居るけど、いいですか?」
『どうぞー』
ヨースケはアルミ冊の門を開けると玄関へ。
ドアを開けると。
「お邪魔しまーす!佐野も上がれよ」
「……うん」
全く見ず知らずの他人の家に上がり込むのは多少気が引けるけど、どうやらヨースケはこの家の住民とは親しげみたいで、誰も玄関先にはやって来ない。
ヨースケに促され家に上がると、ヨースケは直ぐ手前にある部屋のドアをノックした。
「アキラ。俺」
「洋介?入れよ」
中から声がして、ヨースケは部屋の中へ。
俺も躊躇いながらもその後に続く。
「調子はどう?」
「うん。最近特にこれといった変化なし」
「………どうも」
ヨースケの後ろから遠慮がちに声をかけ、アキラと呼ばれた男に挨拶する。
「洋介の友達?」
「こいつ。佐野」
「あっ。君が佐野君?洋介から話は聞いてるよ。いらっしゃい」
アキラはベットに横になっていて、ヨースケはそのベットの隅に座る。
アキラは起き上がろうと身体を起こそうとして、そこですかさずヨースケがアキラの身体を支えた。
「はは…、わり…」
「気にすんな」
起き上がったアキラを改めて見てみると、色白でひどく痩せていて。
そんなアキラのベットの枕元には、バスケットボールがひとつ置かれていた。
「佐野君。初めまして。ごめんね?こんな格好で」
「あ…、いや、俺の方こそ、いきなり訪ねて来たりして…」
「ははっ、そんな事気にしないで、一日中寝てるから退屈なんだ。お客さんは大歓迎だよ」
人懐こく笑うアキラにつられて俺も笑った。
「その辺適当に座ってよ」
アキラに言われて、いまだ部屋の入り口に立っていた俺は部屋の隅に置かれているソファーには座らずに、ベットから少し離れたフローリングに腰を下ろした。
改めて部屋を見てみると、壁にはNBAの選手のポスターやユニフォーム、日本のプロバスケ選手のサイン色紙、作り付けの棚には数多くのバッシュ。
壁に直接打ち付けられたゴールリング。
部屋の中は全てバスケ一色だった。

