ばあちゃんは慣れた手付きで携帯を操作すると、それをヨースケに見せた。
「あいつめ…、遊んでばっかだと思ってたのに……、いつの間にこんな可愛い子と……」
携帯を手に微かに震えるヨースケの横から携帯をチラ見。
そこには貴司と、真っ赤になって怒ったような顔をしてる沢田。
互いの顔を寄せあった自撮りの写メ。
「あ。やっぱり沢田…」
「あら?茜ちゃん知ってるの?沢田瑠璃ちゃん」
「うん。同じクラス」
「瑠璃ちゃん?チクショー、名前も可愛いじゃねーか」
「ホント可愛いわね−、今度遊びに連れてくるって、楽しみだわー」
沢田。
……よかったな。
「どいつもこいつもリア充でいいよな……」
「りあじゅー?なあに、それ?」
「リアルが充実してるって事!あー!腹立つ!佐野っ、行くぞ!思いっきり身体動かしてー!」
ドスドスとリビングを出ていくヨースケに俺とばあちゃんは苦笑い。
「洋介ったら、貴司に彼女が出来てよっぽど悔しいのね」
「多分ね」
「でもね?ホントは洋介は女の子よりも今はバスケットに夢中なのよ」
「知ってる、さっき聞いた、強化選手に選出されたって」
「そうなのよ、またあの頃に戻ったみたいで、以前より生き生きとしてるわ。でも……、普通の人よりもハンデがある分、無理するんじゃないかって心配…」
「ばあちゃん、洋ちゃんは大丈夫だよ」
「ふふふ。そうね」
「佐野ー!早く来ーい!」
急かすヨースケの声が玄関の方から聞こえてきた。
「じゃあ。ばあちゃん。また来るよ、飯旨かった。ありがと」
「いつでもいらっしゃい、またね、茜ちゃん」
リビングを出ると玄関先には既にヨースケの姿は無く、外に出ると一気に真夏の熱気に包まれる。
ヨースケは車のエンジンをかけて既に運転席の中。
俺も助手席に乗り込んだ。
「野外のコート予約してるんだけど、その前にちょと寄り道していいか?」
さっきまでいきり立っていたヨースケは、嘘みたいにけろりとしていて、もうそんな事は忘れてしまったみたいだった。
「うん。いいよ」
「知り合いの家に寄るだけだから」
そう言ってヨースケは車を出した。

