「っと、本来の目的を忘れる所だった」


ヨースケは掛けていたボディーバッグを外し、中から封筒らしき物を取り出して俺の前に差し出した。


「……何?ラブレター?」

「おう。俺、ずっと前からお前の事が…、って違う!いいから見てみろよ」


俺のボケにナイスなツッコミを入れるヨースケから封筒を受け取り宛名を見てみると。


「日本車椅子バスケットボール連盟……、これって…」

「パラリンピック。強化選手に選出された」

「………マジ?」

「俺も初めは何かのイタズラかと思ったけど、どうやらホントみたいだ」

「……洋ちゃん」

「なんだ?」

「……スゲー」

「だろ?」

「スゲーよ!洋ちゃん!スゲー!」

「あははっ!佐野が珍しく興奮してる」

「茶化すなよ、洋ちゃん。おめでとう」

「まだ強化選手に選出されただけだ、喜ぶのはまだ早いさ」

「洋ちゃんなら絶対に日本代表に選ばれるよ、俺が保証する」

「買い被りすぎだっつーの。でも、自信はある」


そうハッキリと言い切る洋介は、眩しい位に自信に満ち溢れていて、きっとそうなる事を確信し、疑う事なんか無駄だとさえ思えてくる程。


日本代表って……
パラリンピックって……


ホントにスゲーよ……、ヨースケは。


だって、車椅子バスケの日本代表で世界で活躍するんだぜ?


熱気溢れるスタジアムの歓声の中、ボールと共に走るヨースケが頭の中に思い浮かぶ。


考えただけでも身震いしそうだ。


「一度は諦めかけてたけど…、沢山の人達に支えられて、ここまでやって来たんだ……、昔思い描いていた形とは違うけど、バスケで頂点に立てるかも知れない……それってやっぱスゲー事なんだよな?」

「……うん」

「……佐野。ありがとう…」

「え?」


何でヨースケが俺に礼なんか言うのかわからなくて、俺が訪ねると。


「……お前の全国大会の試合見て、俺、また頂点に立ちたいって思ったんだ…こんな事位で諦めてたまるかって……」

「……俺は、別に何も…」

「いや、お前のあの時の試合見て再認識したんだ、やっぱバスケが大好きだって……、それが無かったら俺は今頃ここまでたどり着けてなかった、だから、ありがとう。感謝してる。佐野」


あの時の俺は、ただ、必死で……


そんなにまでヨースケに衝撃を与えたつもりは無いんだけど、俺なんかの試合を見てヨースケが再びやる気を起こしたと言うんなら、それは俺にとっても凄く喜ばしい事で。


俺自身も自分の事のように嬉しかった。