「だからね?せめて奏ちゃんが退院するまでは、うちで預からせてもらえないかしら?ハルとも仲良しだし」


シロの為を思ったら、そうするのがいちばんなのかもしれないな……


「うん……、そうしてもらえると俺も助かるよ、ありがと、ばあちゃん」

「まあ!よかった。それじゃ今日から早速預からせてもらうわね?ハルも喜ぶわ」


そう言ってばあちゃんは二匹を優しく撫でながら目を細める。


「ただいまー!」


リビングのドアの向こうから声がした。


「あっ、洋介帰ってきたわね」


ソファーから立ち上がるとばあちゃんはキッチンへ、入れ代わりでヨースケがリビングに入ってきて。


「わり。佐野、遅くなった」

「いや、さっき来たばかりだから」

「お帰りなさい。洋介、お昼食べるでしょ?」

「食う食う。腹減った。佐野も食うだろ?」

「いや、俺は…」

「実は茜ちゃんの分も用意してるのよ、食べてって」

「あ……うん。ありがと…」

「ばあちゃん、用意できたら呼んで、俺ら向こうでゲームでもやってるから」

「はいはい」

「佐野、来いよ」


半ば無理矢理腕を引っ張られて、ヨースケが私物を持ち込み、自室とて使用している部屋へと連れてこられた。


約八畳のフローリング、実家の俺の部屋と同じ位の広さ。


「奏ちゃんに会ったぞ」

「え?……」

「俺も今日、義足のメンテで病院だったんだ、そこで偶然な」

「…………」

「奏ちゃん……、俺の事、知らなかった」

「……うん」

「だから詳しく教えてくんなかったんだな」

「ごめん…」

「……まぁ、言いにくかったんだろうけど…、今度ばあちゃん連れて見舞いに行くから、お前には何も言わないだろうけど、奏ちゃんの事、スゲー心配してるし」

「でも…、奏はばあちゃんの事も……」

「そんな事はわかってるよ、前もってばあちゃんには説明しとくし、無理に思い出させるような事も言ったりしない、奏ちゃんの無事な姿見たらばあちゃんも安心するからさ」

「……うん…、わかった…ホント、色々、ごめん…」

「謝んなくていいよ、ただ、あんま年寄りに心配かけさせるなよ」


ヨースケの言う通りだ。


マスターや岡田先生やばあちゃん。
感謝してもしきれないくらい世話になっているのに、奏の事ばかり考えてしまって、俺の勝手な行動が周りの人達に心配や迷惑をかけてしまっている。


もっとしっかりしろ。俺。


いくら考えてもどうにもらないんだから、焦らずゆっくりと前に進んで行こう。


その内奏だってきっと思い出してくれる筈だから。