◆◆◆
奏が俺の腕の中で眠ってしまったのを確認してから、奏をそっとベッドの上に寝かせた。
雷は通りすぎて、雨も随分と小降りになってきた。
眠る奏の唇に軽くキスを落として、額にかかる前髪を指先でそっとかき分ける。
病室を出ると岡崎先生が扉の前の壁に寄りかかり、俺が出てくるのを待っていてくれた。
「ありがとう…、ございました…」
俺は深く頭を下げた。
「……行こうか?」
「はい」
無理矢理院内に入れてもらったんだ、これから何処に連れていかれるのかは、大体察しがつく。
警備員の所に差し出されるか、もしかすると通報されるか。
非常識な事をやったんだ、仕方ないと思ってるし、覚悟も出来てる。
でもうちにこの事がバレたら困るな……
奏の入院は家族には秘密にしてるから、色々と厄介だ。
保護者を呼べとか言われたりしたら……
……カケルさんに頼もうか…
なんて。
色々と思考を巡らせながら、岡崎先生の後を着いて、来た時と同じような経路で再び夜間外来の出入り口に戻ってきた。
「はいコレ」
岡崎先生は書類らしき紙切れを俺に差し出した。
「何ですか?…コレ…」
俺は書類を受け取りながら岡崎先生に尋ねた。
「診断書と処方箋」
「は?……」
「夜間は会計出来ないから、明日以降窓口で支払いしてね?」
「でも俺……、何処も悪くないし、診察なんて受けてません、だから…」
「君は今夜風邪で診察受けたの」
「…………」
「そう言う事にしとこうか?僕の立場もあるし」
「……はい」
「でも、もうこれっきりね?」
「…はい」
「じゃ、もう遅いから、帰ろうか」
「はい」
岡崎先生は何を聞く訳でもなく、俺と一緒に病院を出た。
「佐野君、帰りは?よかったら送ろうか?」
「いえ…、俺、バイクだから」
「そっか、僕の車あっちなんだ、じゃあね、佐野君」
職員用の駐車場へと踵を反し、歩き出した岡崎先生の背中に俺は。
「岡崎先生」
「何?」
「すみません、無理言って、今日は、ホントに、ありがとうございました」
「……佐野君」
「はい」
「奏ちゃんの記憶……、戻るといいね」
「……はい」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
岡崎先生の後ろ姿を見送って、バイクを停めてある駐車場へと向かいながら、雨があがっている事に気付く。
空を見上げてみると、薄れかけた雨雲の隙間から星が見えた。
奏が俺の腕の中で眠ってしまったのを確認してから、奏をそっとベッドの上に寝かせた。
雷は通りすぎて、雨も随分と小降りになってきた。
眠る奏の唇に軽くキスを落として、額にかかる前髪を指先でそっとかき分ける。
病室を出ると岡崎先生が扉の前の壁に寄りかかり、俺が出てくるのを待っていてくれた。
「ありがとう…、ございました…」
俺は深く頭を下げた。
「……行こうか?」
「はい」
無理矢理院内に入れてもらったんだ、これから何処に連れていかれるのかは、大体察しがつく。
警備員の所に差し出されるか、もしかすると通報されるか。
非常識な事をやったんだ、仕方ないと思ってるし、覚悟も出来てる。
でもうちにこの事がバレたら困るな……
奏の入院は家族には秘密にしてるから、色々と厄介だ。
保護者を呼べとか言われたりしたら……
……カケルさんに頼もうか…
なんて。
色々と思考を巡らせながら、岡崎先生の後を着いて、来た時と同じような経路で再び夜間外来の出入り口に戻ってきた。
「はいコレ」
岡崎先生は書類らしき紙切れを俺に差し出した。
「何ですか?…コレ…」
俺は書類を受け取りながら岡崎先生に尋ねた。
「診断書と処方箋」
「は?……」
「夜間は会計出来ないから、明日以降窓口で支払いしてね?」
「でも俺……、何処も悪くないし、診察なんて受けてません、だから…」
「君は今夜風邪で診察受けたの」
「…………」
「そう言う事にしとこうか?僕の立場もあるし」
「……はい」
「でも、もうこれっきりね?」
「…はい」
「じゃ、もう遅いから、帰ろうか」
「はい」
岡崎先生は何を聞く訳でもなく、俺と一緒に病院を出た。
「佐野君、帰りは?よかったら送ろうか?」
「いえ…、俺、バイクだから」
「そっか、僕の車あっちなんだ、じゃあね、佐野君」
職員用の駐車場へと踵を反し、歩き出した岡崎先生の背中に俺は。
「岡崎先生」
「何?」
「すみません、無理言って、今日は、ホントに、ありがとうございました」
「……佐野君」
「はい」
「奏ちゃんの記憶……、戻るといいね」
「……はい」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
岡崎先生の後ろ姿を見送って、バイクを停めてある駐車場へと向かいながら、雨があがっている事に気付く。
空を見上げてみると、薄れかけた雨雲の隙間から星が見えた。

