30分程度で終わるリハビリも、洋介さんとマサキ君達と一緒に過ごしていたら、随分と長引いてしまった。
もう昼食は運ばれて来てるだろうし、まりあちゃんも待ってるだろうな。
理学療法室に戻ると洋介さんは、マサキ君の担当の理学療法士の先生に挨拶をして「また来るよ」と言って足早に帰ってしまって。
マサキ君は、いつもは担当の先生に送り迎えをしてもらっていたらしいんだけど、もう今日からひとりで大丈夫だからと、それを断り、随分と先生を驚かせた。
私達は外科病棟に戻る事に。
私は歩きで。
マサキ君は車椅子で。
並んで歩いているとマサキ君が。
「二人は付き合ってんの?」
「え?……誰が?」
「洋介さんと奏さん」
「私と洋介さん?」
「うん」
「えー?違うよ、付き合ってなんかないよ」
「え?マジで?」
「うん。ホント」
「じゃ、どんな関係?」
どんな関係?
私と洋介さん。
どんな関係なんだろ?
洋介さんの事は、車椅子バスケットをやってる事とか、将来は理学療法士を目指してる事とか。
とても心が強くて、思いやりのある優しい人だって事。
そして……
左足を失ってしまった事……
色々と知ることが出来たけど、学校も違うし学年も違う、どう言う経緯で洋介さんと知り合ったのか、そう言えば聞いてない。
ただわかっていることは、佐野君と共通の知り合いだと言う事。
ホントに私……
この3ヶ月間、一体どんな過ごし方をしてきたんだろうか?
「友達だよ」
どんな関係かと聞かれたら、多分私と洋介さんは、友達と言う関係なんだろうな。
「ふーん。友達か、仲良さげだったから、付き合ってんのかと思った」
「あはは、違うよー、洋介さんに失礼だよ、それに私、付き合ってる人居るもの」
「えっ?彼氏居んの?」
「うん」
「ちぇー…、残念」
「残念?」
「何でもないよっ、あっ、俺の病室あっちだから」
エレベーターから降りて、通路の分かれ道、私の病室とは反対側を指差すマサキ君。
「俺。723ね。奏さんは?」
「私は766だよ」
「暇な時は遊びに来てよ」
「マサキ君もね」
「うん。行く行く。じゃあまたね、奏さん」
さっきまでの理学療法室とは別人みたいな、少しあどけない笑顔を私に向けて、マサキ君は手を降り病室へと戻っていく。
そんなマサキ君の背中を私は見送った。
洋介さんの言う通り、ホントは素直でとてもいい子なんだろうな。

