「だから俺ね、将来は理学療法士になるつもり、リハビリは、本人は辛くて大変な事ばかりだけど、新たな一歩を踏み出す為にも、その手伝いが少しでも出来ればと思ってる」

「……洋介さんなら、立派な理学療法士になれます」

「うん……、ははは。今はまだバスケ三昧だけどな。お?もうこんな時間だ」


体育館の大きなアナログ時計を見上げてみると、もう直ぐで12時になろうとしていた。


「やべ。午後から佐野と約束してるんだった」


佐野君と?


「マサキー!そろそろ戻るぞー!」

「えー?後少しー!」

「あまり無理するな、明日動けなくなるぞ」

「ちぇーっ!」


口を尖らせながらもマサキ君は素直に戻ってきて、車椅子から洋介さんが降ろしてくれるの断って、乗るときよりも随分速い時間で、自分の力で車椅子から降りる事が出来た。


「お前、飲み込み早いな、もうリハビリも次の段階いけるよ」

「次の段階?」

「バスケ、やってみないか?」

「バスケ?」

「うん」


マサキ君は今まで走り回っていた車椅子を見つめながら。


「俺……、交通事故にあってから、今日…、初めて自力で顔に風を感じたんだ」


マサキ君は車椅子に手を延ばし。


「スゲー気持ちよかった」

「だろ?」

「……また…、走れるかな?」

「今日、走ったじゃん」

「俺……、走れるんだ…」

「別にバスケばかりじゃないぞ?陸上だってこの足があれば出来る」

「足?」

「そ。足」


洋介さんは車椅子をポンと叩いた。

「……俺の…、足」

「お前の、足」

「俺……走れる、また、走れるんだ…」

「うん。走れるよ」

「俺、やる。バスケ、やってみる!」

「おう」


笑うと洋介さんはマサキ君の頭をくしゃりとかき回した。