「何やってんだ、あそこ」



洋介さんの視線の先にはさっき大声を出したらしい男の子と、倒された車椅子。



辺りは静まり返り、その男の子は周りからの視線が注がれていた。



「こんな事してなんになるっつんだよっ!!」

「ちょっと、マサキ君落ち着こうか?」

「うるせーっ!命令すんな!ハゲッ!」

「うん。ハゲでいいから、もう一回やってみようか?」

「動かねーんだから!やる意味ねんだよ!」



男の子と担当の理学療法仕の先生だろうか?二人が言い争っている 。



「………奏ちゃん、ちょっと待ってて」



洋介さんは立ち上がると、言い争う二人の側に近づいていき。


私も咄嗟に立ち上がるとその後を追った。



「センセー」

「お。洋介じゃないか、久しぶりだな」

「うん。久しぶり」



洋介さんはその先生と知り合いらしく、仲良さげに二人で話し出した。



「センセ。ちょっとコイツ貸して?」


洋介さんは男の子を指差しそう言って。


「まぁ…、いいけど。あまり無茶な事するなよ?」

「ははは。大丈夫だよ、おいお前、マサキ?だっけ?」



洋介さんは床に足を投げ出し、ふて腐れている男の子の前に屈むと。



「はっ?誰だよお前」

「俺、洋介。ちょっといいか?」

「は?いきなり何言って…っ!うわっ」



洋介さんは軽々と男の子を持ち上げて、肩に担いでしまった。



「なっ!何すんだよっ!降ろせ!」

「まぁ、いいから、着いてこい」

「はあっ?着いてこいって?運ばれてんの俺だけどっ?!」

「いいから、いいから」



洋介さんは男の子を担いだまま、理学療法室の出入り口へと向かって、スタスタと歩き出してしまって。



私は何が起こったのかわからず、取り合えず洋介さんの後に着いていった。