「中村さん…」
「洋介でいいよ」
「洋介さん?」
「うん。奏ちゃんは俺の事、そう読んでたよ」
「洋介さんは、大学生ですか?」
「俺は高3、奏ちゃんのいっこ上」
「高校生ですか?大人っぽいから大学生位だと思ってました」
「はは。よく言われる、俺デカいしね」
「佐野君もかなりの長身だけど、洋介さんは佐野君よりも背が高いですね?」
「そうなんだよ、また少し延びちゃって、今日はコイツのメンテも兼ねて来たんだよ」
そう言って洋介さんは左足をポンと叩いた。
「コイツ?」
「え?ああ…、覚えてないんだったね、ほら」
洋介さんは前に屈むとジーンズの裾をたくしあげた。
………えっ?
見ると洋介さんの足は義足だった。
「ははっ、驚いた?」
「はい……、あっ!いえっ」
「いいんだって、驚いて」
洋介さんはジーンズを元に戻すと左足を撫でながら。
「これね、中1ん時に事故にあったんだ…」
「事故……、ですか」
「うん。トラックに潰されたんだ……で、使い物にならなくなって、切断……」
「……………」
私は言葉が出てこなかった。
「だから、奏ちゃんが事故にあったって佐野から聞いた時は、スゲー心配だった。でも、元気そうでよかった、安心したよ」
そう言って洋介さんは私に笑ってみせた。
私は何を言っていいのかわからなかったけど、同じように洋介さんに笑顔を向けた。
「やってらんねーんだよっ!!」
バンッ!!!
「ひゃっ!」
突然の大声と何かを叩き付けるような音がして、一瞬ビクッと肩を震わせてしまった。

