そろそろ10時。
リハビリに行かなくちゃ。


道具を片付けて病室を出ようとすると、まりあちゃんが帰ってきた。


帰ってきたって言い方はおかしいかな?
戻ってきた。かな?


「かなでおねーちゃん!ただいま!」

「お帰りなさい、まりあちゃん」

「こら!まりあ!大きな声出さないの!」


まりあちゃんの後ろからやって来たのは、まりあちゃんのママ。


「えー?ママの声の方が大きー」

「ママはいいの!奏ちゃん、いつもまりあが騒がしくてごめんなさいね」

「いえ、そんな事ありません。まりあちゃん、いつも元気で、凄く可愛いです、私これからリハビリなんで、行きますね?まりあちゃん、後で遊ぼうね」

「うん!行ってらっしゃい!」

「こら。まりあ、また大きな声」

「ふふふ。行ってきます」


手を振って見送ってくれるまりあちゃんに私も手を振ってリハビリテーション科がある理学療法室へと向かう。


リハビリといっても私は、ヒビが入ってる脇腹辺りをホットパックで10分間温めて、その後に低周波による20分程の電気治療。


30分位で終わる程度のもの。


理学療法室には様々な人達が居て、マットの上に仰向けになり足を上下させている人。


車椅子から降りる練習をしている人。
それとは逆に乗る練習をしている人。


義足でポールに掴まり、歩く練習をしている人。


みんな苦痛に顔を歪めながら頑張っている。


そんな頑張ってる人達を横に、治療を受け終わり、理学療法室を出ようとしたら。


「奏ちゃん?」


名前を呼ばれて振り返ると、そこには長身の男の人。