摘まんだピアスが無くならないように、ビルケースの隅にそれをしまった。
赤くて丸くてころんとしていて可愛いピアス。
佐野君が来たら返してあげよう、そして何故来てくれたのか、それも聞きたい。
洗顔セットを持って病室を出る。
洗顔を済ませて病室に戻るとすでに朝食が運ばれてきていて、それを食べてから昨日処方してもらった薬を飲んだ。
時間を確認してみるとまだ9時前。
後一時間、勉強でもしようか。
筆記用具と参考書と問題集とノート、それを広げて勉強に取りかかる。
意外にもすらすらと問題を解くことが出来るのは、佐野君のお蔭。
佐野君は私の為に要点を纏めたノートや、参考書にアンダーラインを引いたものを持ってきてくれて、正直とても助かっている。
この調子だと夏休み中には二学期の予習も出来そうだ。
佐野君って理数が凄く得意なんだよね、教えるのも上手だし、でも古文や古典が苦手みたい。
「ふふふ」
自然と口元が綻びて、笑い声がこぼれた。
そして佐野君の事ばかりを考えてしまっている自分に気付く。
何故だろう?
どうして佐野君の事ばかりを考えてしまうんだろうか?
佐野君の事を考えていると、じんわりと心が暖かくなっていく。
こんな気持ちになった事は今までに無かった事だから、どうしていいのか戸惑ってしまうけど。
美樹ちゃんとは違う。
佑樹とも違う。
男の子の友達ってこういうものなのかな?

