目が覚めて窓の外を見てみると昨晩の雷雨が嘘みたいな快晴で。
早朝にもかかわらず青い空にはすでに入道雲。
ベッドから降りて窓を開けると、うるさいくらいの蝉の音。
大きく息を吸い込んだ。
「……痛」
胸を張って深呼吸したら脇腹が痛んだ。
−−コンコン…
「おはようございます。検温ですよー」
ワゴンを押して入ってきたのは前田さん。
「あ。おはようございます。前田さん」
「昨夜はよく眠れなかったでしょ?雷、凄かったもんね」
……昨夜は…
雷が酷くて怖くてたまらなくて、部屋の隅で蹲っていたら佐野君が……
「先ずは血圧を計ります、こっちに座って?」
前田さんにそう言われて私はベッドの隅に腰掛けた。
血圧を計ってくれている前田さんに私は。
「あの、前田さん…昨夜この部屋に誰か来ませんでしたか?」
「ん?私以外は誰も来てない筈だけど」
「誰も?」
「わたし当直だったから、深夜に見回りに来たけど…、誰も居なかったわよ?」
「そう…ですか…」
怖くて震えていた私を抱きしめてくれていたのは確かに佐野君だった……
それで安心した私は、いつの間にか眠りに落ちていた。
と思うんだけど……
よく考えてみれば。
「消灯時間内に誰か来る事って、出来ないですよね」
「病院の関係者ならそれは出来るだろうけど、一般の人が面会時間外に来る事は出来ないわね、もし誰か来たとすれば、詰め所に居たわたしか他の看護師が気付く筈だし」
「そう…ですよね」
やっぱり夢だったんだろうか。
でも夢だと思うにはあまりにもリアルで、いまだに佐野君の暖かい感触が残っているようで……

