え……?何?


後ろから感じるその温もりはしっとりと濡れていて、驚き私は後ろを振り返った。


ずっと瞼を閉じていたから視界がまだはっきりとしない。


お父さんでも佑樹でもない、優しく後ろから私を包み込んでいる。


この温もりは確かに身に覚えがある温もり。


「佐野…、君?」


なぜそう思ったのか、自分でもわからない。


でも。
この温もりは確かに佐野君。


「もう大丈夫。怖かっただろ?奏」

「なんで……、佐野君がここに…」


−−ガラガラガラッ!ドォンッ!!


「きゃっ!」


再び激しい落雷の音がして、私は咄嗟に身体の向きを変えて佐野君にしがみついた。



すると佐野君は両腕で私の頭をすっぽりと包み込んで、雷音と光から私を遮断してくれて。



佐野君の背中に腕を回して、ギュッと佐野君のシャツを掴んだ。



「大丈夫…、大丈夫」



そう呟きながら佐野君は私の頭を撫でてくれていて、私は佐野君の胸に耳を当て、トクントクンと脈打つ佐野君の心音を聞いていた。



さっきまで震えていた私の身体は、いつの間にかそれは徐々に薄れていって。



佐野君の、優しくも感じられる心音に集中していると、恐怖も次第に和らいできた。



佐野君の鼓動は落ち着くな。


トクントクントクン。


やがて雷音は聞こえなくなり、佐野君から奏でられる鼓動が身体中に浸透していくみたいで、じんわりと暖かくなっていく。



この安心感のある音色と共に、徐々に薄れていく意識の中、優しいに温もり包まれながら。



次第に、ゆっくりと、落ちていく。