和らいでいたと思っていた雨足は、国道に出てバイクを走らせていると再び強くなりだした。


打ち付ける雨と、徐々に近付いてくる雷音を背中に感じながら、総合病院へと向かう。


行ったとしても、病院の中に入れる訳ではないと言う事はわかっているけど、奏が怖がって泣いているんじゃないかと思うと、いてもたってもいられなくて、衝動的に行動してしまっていた。


濡れて信号の光が反射しているアスファルト。


交差点を左に曲がれば総合病院が見えてきた。


駐車場にバイクを停めて、奏が居るはずの病棟の七階の窓を見上げてみる。


所々に灯りは点っているけど、病室の電気は全て消えてしまっているようだ。


バイクから降りて夜間外来と非常口。


どちらに向かうか考えたけど、非常口の方に向かう。


遠目に見ても当たり前だけどそこには警備員が立っていて、やっぱり中に入る事は難しそうだ。


−−ゴロゴロ…ゴロゴロ…


かなり近付いてるな……


……奏。
怖がってないか?
泣いてないか?


何とか中に入れないかと考えいると、非常口から誰か出てくる姿が見えて、側にあった植え込みに身を隠した。


……は
まるで不審者か犯罪者じゃん。


自分のやっていることに、今更ながら呆れてしまって苦笑する。


非常口から出てきた人影が近付いてきて、よく見てみるとその人物は。


「……岡崎先生」

「えっ?誰?」


立ち止まってキョロキョロと辺りを見回す岡崎先生の前に姿を現すと。


「……君…、佐野君?え?どうしたのこんな時間に…、あ。もしかして夜間外来?」

「違います…、けど、病院の中に入れてもらえませんか?」

「へ?」

「お願いします。少しだけでいいんで、中に入れてください…」


身体を折って岡崎先生に頭を下げた。