「ちょっと!君っ!大丈夫?!」



医師は方膝をついて俺の肩を揺さ振り、俺の身体はカクカクと頼りなく揺れた。



「…あ……、あ……奏…っ、…奏……、かなで!かなでっ!!」


「しっかりしてっ!」



−−バシッ!



頬に刺さるような痛みを感じて。



それがジンジンと熱を帯びて広がっていく。



「落ち着いて…。彼女は、奏さんって言うの?」



震える身体はまだ止める事は出来ないけど、医師の言葉に俺はこくりとひとつ頷いた。



「君は?奏さんのご家族?」



首を横に振る。



「ホントに怪我は無いんだね?」



また頷く。



「そうか…、幾つか質問するよ?いい?大丈夫?」


「……はい。大丈夫…、です」


「奏さんのご家族の方と連絡とれる?」



…………そうだ。
奏の父親に連絡しないと……



……何やってる、俺。



真っ先に知らせないといけないのに……



でも奏の父親の会社なんて知らないし、自宅の番号も知らない。



そうだ。
奏の携帯。



ポケットから奏の携帯を取り出してみるけど、閉じることすら出来なくなった携帯は、潰れて画面は割れてしまっていて、使い物にならい事は歴然としていた。



「連絡…、してみます」



そう言って奏の携帯を再びポケットにしまい、自分の携帯を取り出し電話をかける。