緊急外来処置室の扉の前。




俺は通路の長椅子には座らず、壁を背に床にしゃがみ込み、両手を組み合わせ額に押しあてていた。




奏と一緒に救急車に乗り込み、総合病院に運び込まれた奏はそのままこの扉の向こうへと姿を消した。




今だ小刻みに震える身体は自分の意思では止める事が出来なくて。




ただひたすら待つ事しか出来なかった。




「大丈夫ですか?」


頭の上から声がして、顔を上げるとそこには若い男の医師。


「奏はっ?!」


俺は掴みかからんばかりの勢いでそう訊ねると医師は。


「まだ…、何とも言えない……、目立った外傷の頭部を止血して、CTとレントゲンでこれから詳しく検査します…、君は?怪我はない?」


「……俺は…、大丈夫、です…」


「でも……、シャツに血が…」


「これは………」




………奏の…、血だ。




俺の制服の白いシャツの赤いシミは、半分乾きかけてゴワついていた。




そのシャツの赤いシミを掴みギュッと握る。




こんなに沢山の血を流して、動かなくなってしまった奏。




もし………




このまま………






奏が居なくなってしまったら?






−−−ゾクリ……






今までに感じた事が無いような寒気が全身に駆け巡る。




途端にカチカチと音を経て、歯の音が鳴り出す。