奏はフッと笑うと、そのまま俺の腕の中でカクンとその力を失った。
「奏っ?!……かなでっ!!」
さっきまで笑って俺に向かって走って来ていたのに。
何が何だか分からない。
どうしてこうなった?
俺がバスに乗らなければ。
電話に出ていれば。
メールなんか送らなければ。
頭の中では、繰り返し、自分がした事に対しての後悔と憤りで身体中がガタガタと震えだした。
俺の腕の中で頭から血を流す奏。
俺のシャツにもその赤いシミが広がっていく。
「奏っっ!!」
名前を呼ぶけど、奏は返事をしてくれない。
「かなでっ……うっ…奏…」
そんなに血を流したらダメだろ?
どんどん冷たくなってったらダメだろ?
「うっ……うぅ〜っ……かなっ…、っ」
誰か!誰でもいいからっ!
奏を助けてくれ!!
俺は、どうなってもいいから。
何を失なってもいいから。
奏だけは………
不安や不満なんか思ったりしてごめん。
奏がそこに居ればそれだけでいいんだ。
俺に笑ってくれてるだけでよかったんだ。
知らないうちに奏に嫌な思いをさせていたのかも知れない。
階段で呼ばれた時に冷たい態度をとってしまった。
何か言いかけた奏に背を向けてしまった。
俺を選んでくれない奏に、改めて、言葉に出してほしく無かったんだ。
奏だって辛いのは俺がいちばんわかっていながら、それをガキみたいな感情で勝手にひねくれて。
全部 全部 全部!!
全部俺が悪いんだ。
どんどん、赤いシミが広がっていく。
「かなでっ…っ、…かなでっ」
俺は奏を抱きしめたまま、その場で奏の名前を繰り返す事しか出来なかった。

