◆◆◆
一瞬の出来事だった。
奏の後ろから走って来る、黒いワゴン車が歩道に乗り上げ。
そのまま…、奏の身体を………
弾き飛ばされた奏はそのまま後ろに倒れ込んだ。
「かなでっっ!!」
声が裂けんばかりの叫びを上げて、倒れた奏の元へと走る。
何でもっと早く走れない!
俺の足!!
「奏っっ!!」
やっと奏の元に走り寄り、その顔を覗き込む。
「奏っ!」
縁石に頭を打ち付けられたのか、その白い顔に、首筋に、赤く流れる幾つもの筋。
「奏っ!大丈夫かっ?!直ぐに救急車呼ぶからっ!」
ガタガタと震える手で携帯を取り出す。
「さの……くん…あの…ね」
「喋るなっ!じっとしてろっ!」
「…きーて…さのく」
「いいからっ!黙ってろ!」
一刻も早く救急車を呼ぼうとするけど、視界はぼやけ、手は震え、上手く携帯を扱えなくて、気が狂いそうなもどかしさの中、何とか119のボタンを押した。
「東区!区立体育館!早く!早く来てくれっ!奏がっ!」
向こうが色々と聞いてくるけど、俺はそんな事に答える余裕なんかなくて、場所だけ伝えて携帯を投げ捨てた。
「……さの…くん」
弱々しい奏の声がして。
「今救急車呼んだから!」
「なか…ないで…」
ぼやける視界から奏が手を伸ばすのが見えて、その手をギュッと掴んで頬にあてる。
「奏っ……、大丈夫だ、大丈夫」
「さの…くん…」
「何?……」
「あ……、めりか…」
「アメリカ?」
「ばすけっと……」
「何言ってる?アメリカへは行かないって…」
「ばすけっと……やめちゃ…だめ…おねが、い…」
「わかった、わかったから…、もう喋るな…」
「よかっ、た……、やくそく、ね?」
「奏っ!」
動かさない方がいいってわかっていながら、俺は奏の身体を起こして抱きしめた。
奏……
奏っ!!
奏っ!!!
一瞬の出来事だった。
奏の後ろから走って来る、黒いワゴン車が歩道に乗り上げ。
そのまま…、奏の身体を………
弾き飛ばされた奏はそのまま後ろに倒れ込んだ。
「かなでっっ!!」
声が裂けんばかりの叫びを上げて、倒れた奏の元へと走る。
何でもっと早く走れない!
俺の足!!
「奏っっ!!」
やっと奏の元に走り寄り、その顔を覗き込む。
「奏っ!」
縁石に頭を打ち付けられたのか、その白い顔に、首筋に、赤く流れる幾つもの筋。
「奏っ!大丈夫かっ?!直ぐに救急車呼ぶからっ!」
ガタガタと震える手で携帯を取り出す。
「さの……くん…あの…ね」
「喋るなっ!じっとしてろっ!」
「…きーて…さのく」
「いいからっ!黙ってろ!」
一刻も早く救急車を呼ぼうとするけど、視界はぼやけ、手は震え、上手く携帯を扱えなくて、気が狂いそうなもどかしさの中、何とか119のボタンを押した。
「東区!区立体育館!早く!早く来てくれっ!奏がっ!」
向こうが色々と聞いてくるけど、俺はそんな事に答える余裕なんかなくて、場所だけ伝えて携帯を投げ捨てた。
「……さの…くん」
弱々しい奏の声がして。
「今救急車呼んだから!」
「なか…ないで…」
ぼやける視界から奏が手を伸ばすのが見えて、その手をギュッと掴んで頬にあてる。
「奏っ……、大丈夫だ、大丈夫」
「さの…くん…」
「何?……」
「あ……、めりか…」
「アメリカ?」
「ばすけっと……」
「何言ってる?アメリカへは行かないって…」
「ばすけっと……やめちゃ…だめ…おねが、い…」
「わかった、わかったから…、もう喋るな…」
「よかっ、た……、やくそく、ね?」
「奏っ!」
動かさない方がいいってわかっていながら、俺は奏の身体を起こして抱きしめた。
奏……
奏っ!!
奏っ!!!

