区立体育館を通り過ぎて角を曲がれば次のバス停だ。
そう思って走っていると、曲がり角からこちらに向かって走ってくる一際高いシルエット。
あれは……
こんなに遠くからでもわかる。
どんなに沢山の人が周りにが居たって。
どんなに遠く離れていたって。
大好きな人だからひと目でわかる。
「佐野君っ!」
「奏っ!」
ああ。
佐野君だ。
私の大好きな人だ。
もう佐野君しか見えない。
この先に何が起こったって佐野君さえ居ればそれでいい。
お父さんごめんなさい。
今までホント気持ち言えなくてごめんなさい。
佑樹。
私はあなたとは一緒に居られない。
だって私はあなたの事、好きじゃないから。
ちゃんと言う。
きちんと言う。
だから、私がサヨナラするのは佐野君じゃなくて佑樹。
「奏っっ!!危ないっ!!」
「え?」
キィィィーー−−ッッ!!!
後ろから凄い音がして振り向いて見たら。
バンッ!!
「かなでっっ!!!」

