「奥村さんはどうするの?」


………私は…


「私っ!」


さっきまで力が抜けてしまった身体は急にそれを取り戻し、私は立ち上がり社会科資料室を飛び出した。


走って階段を降りて急いで教室へ。


鞄を掴むと再び廊下を走った。


佐野君。


沢田さんとノートを持ってったから多分職員室。


慌てすぎて足が縺れて転びそうになるけど、何とか持ちこたえて職員室へと急いだ。


職員室の扉を乱暴に開けて、その空間を見渡して見るけど佐野君の姿はそこにはなくて。


「奥村。どうした?そんなに慌てて」


担任の先生が私に気付いて声をかけてきて。


「あのっ…、先生、佐野君は?」

「佐野?佐野なら少し前に帰ったぞ?」

「ありがとうございましたっ。さよならっ!」

「ちょっ!奥村!扉位閉めなさい!」


先生の声を背中に聞きながら下駄箱へと走る。


靴箱の中身を確認して佐野君がもう学校に居ない事がわかったから、私もローファーに履き替えて校舎を出た。


スカートのポケットから携帯を取り出して、佐野君のアドレスを開いた。


走りながら電話をかける。


呼び出すけど佐野君は出ない。


私は電話を切りそれを手に持ったまま校門を出た。


その時携帯が震動して、すかさず開いて見たら佐野君からのメール。


『ごめん、今バスに乗ったとこ』


私は一旦立ち止まって返信。


『今すぐ話したい事があるの』


直ぐに返事が来て。


『次で降りるから』


携帯を閉じて私はまた走り出した。


いつものバス停を通り過ぎて次のバス停へと走る。


区立体育館を通り過ぎたら次のバス停が見える。


視界に区立体育館の大きな屋根が見えてきて、私はさらに足を急がせた。