「私だって!出来る事ならそうしたいよっ!でもっ、出来ないの!佑樹の事なんか好きじゃない!私は佐野君の事が好きなのに!」


ダメだっ……!
もう止まらないっ!


「お父さんの事っ…、考えるとっ…それはっ、出来ないのっ…、また仕事、失なって、好きな人にまでっ、離れていかれたらっ…お父さんはどうなるの?」


涙が一気に溢れ出す。


「私さえ我慢すればっ、大丈夫って…ずっと思ってた…、でも、佐野君に出逢ってしまって…、こんな気持ち、初めてで、でも、どうする事も出来なくて…、私っ、佐野君がっ、好きなっ、だけ、なのにっ…うぅ…うっ…」


これ以上の言葉は嗚咽にかき消されてしまって、私はその場にしゃがみ込み、子供みたいに泣き崩れた。


「……ちゃんと、自分の気持ち、言えるじゃない…」


いつの間にか美里さんは私の目の前に来ていて。


「それ、誰かに話した事ある?」


私はフルフルと首を横に振った。


「言ってみないと何も変わらないと思うよ?お父さんにも佑樹にも茜にも…」


そんな事、言える訳ない……


「あたしは佑樹を諦めない、それだけ佑樹の事が好きだから。茜に言われたの、諦めたらそこで試合終了だって…」


諦めない?
試合終了?


「だからあたしは佑樹を諦めない」


私は顔を上げて美里さんの顔を見た。


………私。


自分からは何の努力もしないで、それで全てを諦めてた?


美里さんは私が居るのに佑樹を諦めないってはっきりと言える。


私は佐野君の事が好きなのに佑樹と居る方を選んで、努力もしないで諦めてる。


佑樹にも家族であるお父さんにも、大好きな佐野君にさえも、ホントの気持ちが言えないでいる。


美里さんにだって私は疎まれて仕方ない存在なのに、こうやって私に真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれてる。


私はひとりうじうじと考えるだけで、何にもしていない。


やろうとも、していない……