窓を開けるとムッとしていた室内に外からの風が吹いてきて、窓辺に立つ美里さんの栗色のふわふわした巻き毛が、風にそよいで肩を撫でていた。


何の話か私はそれが気になった。


最後に美里さんと話したのは、球技大会の日の生徒会室。
佑樹の事がずっと好きだったと、私に告げたあの日以来。


「……茜と、うまくやってる?」

「え?」

「あはは。そんなに驚かないでよ」


美里さんは窓枠を後ろ手に私の方を向いて。


「……佑樹、知ってるよ、あなた達の事」


その一言に私は一瞬クラリと目眩を感じた。


「……知ってる?」

「うん」

「どうして、それを、美里さんが、知ってるの?」


途切れ途切れになる言葉を何とか繋いで、私は美里さんに聞いた。


「佑樹から聞いた」

「佑樹、から…」


急に力が抜けそうになって、後ろのドアにガクンと背中を付いた。


佑樹は私と佐野君の事、知ってるの?


知っててわざわざ佐野君の前であんな事を言ったの?


何で?
どうして?


「ねえ?奥村さん」

「…………」

「佑樹と別れて?茜の事、好きなんでしょ?」

「…………」

「あたしは佑樹が好きなの。もうずっと前から、あなたが佑樹と付き合う前からずっと…」

「…………」

「どうして佑樹の言いなりなの?茜が好きなんでしょ?」

「…………」

「あなたがそんなんだから、佑樹だって調子に乗っちゃうんじゃないの?嫌なら嫌って言えばいいじゃない。好きなら好きって言えばいいじゃない」

「美里さんに何がわかるのっ?!!」


私は自分でも信じられない位の大きな声を出してしまっていた。