冷静に考えてみれば、学校のこんな場所で出来る話じゃない。


誰が見てるかもわからないのに。


私…、どうかしてるみたい。


佐野君の事となると冷静でいられなくなる。


アメリカ行きを決めた佐野君だから、私の方からお別れを告げれば、意外にあっさりと終りに出来るかも知れないのに。


そうさせたくなくて、少しでも引き延ばしにしているのは間違いなく私だ。


今日……、言おう。


でも、いつ言う?


この後には焼肉食べに行くって言ってたし、私もアルバイトがある。


今夜?


佐野君のアルバイトが終わるのを佐野君のアパートで待っていようか?


うん。
そうしよう……


「奥村さん?」

「ひゃっ!」


突然肩に手を置かれ、びっくりしてしまった私は大袈裟な声を出してしまった。


「どうしたの?具合、悪いの?」

「違…、何でもな…」


階段に座ったままだった私が振り返えるとそこには。


「………美里さん…」

「ちょっと、大丈夫?凄く顔色悪いけど……」


美里さんは隣に腰かけて、私の顔を覗き込んできた。


「保健室、行く?」

「え…?あの…、大丈夫、だから…」

私は立ち上がろうとしたら、美里さんは私の腕を掴んで。


「ホントに?」

「うん。平気…」

「じゃあさ?ちょっとだけ、話せる?」

「え?」


美里さんは私の返事を待たないで、腕を掴んだままさらに上の階へと階段を上っていく。


三階までやって来ると社会科資料室の扉を開けて、その中に私を招き入れた。


「うわ、汚いね…」


資料室は掃除が行き届いていなくて、埃っぽくて、美里さんは顔をしかめながらそう言って窓を開けた。