俺が教室から出ようとしたら。
「かなちゃん!」
突然美樹が教室の窓から顔を出し、大声で奏を呼ぶもんだから。
「はいっ!……何?美樹ちゃん」
「あたし用事あるから先に行ってて!」
「えっ?美樹ちゃ……」
「美樹ぃーーっ!ちょっと待て!そこ動くな!」
「げ!見つかった!じゃあね!かなちゃん!また後でね!」
言いながら走り去る美樹の後ろから拓也が追いかけてきて。
「待てーーっ!」
「やだよーだ!」
「写真返せーーっ!!」
その後ろからさらに貴司が。
何やってる?あいつ等……
「………何?追いかけっこ?」
キョトンと廊下を見つめる奏。
「全く、騒がしいよな、美樹ちゃんは…」
今だ戸口に立って走り去る三人を見つめていると、佑樹が俺の横をすり抜けざまに。
「19日から3日間だからな、必ずバイト休めよ?奏」
19日から3日間……?
それって…、リョータ達の決勝戦……
「………うん…、わかっ…」
瞬間俺と目があって奏は咄嗟にうつ向き視線を反らす。
「……わかったよ…、佑樹…」
「じゃ、また今度詳しい事はメールするから。じゃあね。佐野」
佑樹はわざとらしく俺の名を呼んで、その場から立ち去ると、残された俺は奏のうつ向いた横顔をじっと見つめてしまっていた。
何だよ?それ?
約束したよな?
一緒に決勝戦見に行くって……
思わず側に寄って奏にそう詰め寄りたくなる。
頭ではわかっていても心が着いていかない。
佑樹なんかほっといて、俺と一緒に行こう。
そう言いたくなる自分が情けなくなって、腹が立ってくる。
奏は悪くない。
そんな事はわかってる。
わかっているけど……
「佐野君、邪魔」
目の前に沢田の姿があるのに少しも気付かなかった。
「あ…、ごめん。て、それ運ぶの?」
見ると沢田は両手で課題のノートを持っていて。
「先生に頼まれたの、全く、あたしが一番前の席だからって、迷惑な話…」

