その部屋はお母さんとお父さんの寝室みたいで、20畳位はあるんじゃないだろうか?広々としたとても清潔で落ち着いた部屋。


「ちょっと来て」


お母さんはウォークインクローゼットの中に入り私に手招き。

中に入ると。


「わあ……」


クローゼットの作り付けの棚の上には、沢山のトロフィーと表彰状。


「これ、全部茜のなの」


お母さんはその中のトロフィーのひとつを持ち、私に見せてくれた。


「……凄い」

「でしょ?」


お母さんはポカンと口を開けている私に微笑んで見せた。


「これ、全部、バスケットのですか?」

「そうよー。ミニバス時代からのなの」


お母さんはトロフィーを元の位置に大事そうに戻した。


「お母さんの自慢の品なの」


ふふふ。とお母さんは笑うと綺麗に並べられたトロフィーや表彰状にゆっくりと視線を走らせながら。


「……ホントはね?茜に全部捨てろって言われてたの。でも、コッソリ隠しておいたんだ」


そう言って私に視線を戻した。


「あ。本来の目的を忘れる所だったわ。ちょっと待っててね?」


お母さんはさらにクローゼットの奥から小さな箱を取り出して私に見せると。


「これ、奏ちゃんにあげる」

「え?…、何ですか?」

「ふふふ。開けてみて」


箱を受け取り中を見てみると、さらにその中にはフタ付きの箱が入っていて、開けて見てみると。


「……指輪」

「そう、指輪」


宝石なんてよくはわからないけど、その輝きは明らかにプラチナとダイヤである事に間違いなさそうで。


「こっ、こんな高級な物、頂けませんっ」


私はお母さんにその箱を向けて、お母さんはその箱を私から取ると、指輪を摘まんで私の左手を取り、薬指に嵌めてしまった。


「うん。ピッタリ、よかった」


お母さんは満足気に微笑むと。


「これね。わたしのお母さんの形見なの、茜のおばあちゃんね」

「佐野君の、おばあちゃん?」