洋介さんとの電話を切って、お父さん宛にメールを作成していたら、携帯が震動して着信を知らせて。
「………佑樹」
画面を見ながらそう呟く。
出ようかどうか一瞬躊躇うけど、幸い部屋には私一人。
私は通話ボタンを押した。
「……はい」
『奏。もう帰ってるのか?』
「あ…、それがね?」
佑樹には美樹ちゃんと二人で、美樹ちゃんの親戚の家に旅行だと言ってある。
私はもう一泊させてもらう事を適当な嘘で告げると、佑樹はさほど反対する風でもなくて。
最近の佑樹は自身も忙しいらしくて、以前ほどの呼び出しも随分減ってきている。
私も今はアルバイトがあるから、その辺は喜ばしい事なんだけれど。
『わかった、あ。それと、今年も行くから、バイトは休み入れろよ?』
「行く……?何処に?」
『去年も一昨年も行っただろ?うちの別荘だよ』
確かにお父さんと一緒に去年もその前の夏休みも、横田家の別荘にお世話になった。
今年も、行くんだ……
「うん。わかった、いつ行くの?」
『8月19から二泊』
「19日から二泊だね、うん。わかっ……」
言いかけて、ある事に気付いてハッとする。
19日から二泊?
と言う事は21日まで。
21日は確か佐野君と………
『奏?どうした?』
「え?……、あ…19日ね…うん。わかった……」
それから課題の話や、佑樹の生徒会なんかの愚痴を聞かされて電話を切った。
リョータ君達の全国大会。
佐野君と一緒に行くって約束してたのに……
夏休みの間は出来るだけ佐野君の側に居たかったのに……
ずるずると引き延ばしにしたら、余計に辛くなるってわかってる。
それでもいいから少しでも長く一緒に居たいと思っていたけど、それすらも叶いそうに無い。
佐野君の為には、出来るだけ早く………
終わらせないといけないのかも知れない……

