もしかして佐野君……


酔っちゃってる?


「ああっ!佐野っ!自分ばっかりズルいぞ!……、じゃなくて。ズルい…、わよ?」


二階から降りてきたのか、リビングの入口から拓也君がこちらを指差しそう言ってきて。


「拓美さんも飲むかい?」

「えっ?いいんですか?じゃ、遠慮なく〜♪」


ソファーに腰を下ろしてしまった。


お母さんは呆れて。


「茜、程々にしなさいよ?お母さんお風呂に入ってくるから、奏ちゃん、茜もこんなだから、今日は泊まっていきなさいね?」


「え?…あ…、はい…」


お母さんがリビングから居なくなると、お父さんは冷蔵庫からビール、チューハイ、さきイカやナッツやスナック菓子なんかを出してきて。


「さ。飲み直し、飲み直し」


宴会が始まってしまった。


佐野君は持っていた缶が空になったらしく、再び缶ビールを空けると、ゴクゴクとまるで水でも飲むみたいに喉を鳴らす。


拓也君とお父さんは既に三回は乾杯をしていて、かなり盛り上がっている様子。


これじゃ今日はホントに帰れそうにないな……


佐野君もアルバイトは夕方からだし、お父さんにはメールでもう一泊するからと伝えればいいだろうけど、シロをおばあちゃんに預けてあるしな……


おばあちゃんに連絡してみよう。


佐野君の部屋に置いてきた携帯を取りに行こうかと立ち上がると、佐野君から手首を掴まれ。


「どこ、行くの?」


そう言って私を見上げる佐野君の瞳は熱っぽく潤んでいて、明らかに酔っていると言う事が伺える。


「携帯取りに、二階に、もう一泊する事連絡しとかないと」

「泊まるの?」

「うん。おばあちゃん次第だけど…」

「あ……、そか、シロ…、ばあちゃんちだ…俺が、電話する…」


そう言って佐野君は立ち上がろうとするけど、よろけてしまいそうになって、私は咄嗟にその身体を支えた。


「いいよ、私がするから、佐野君はゆっくりしてて」


そう言い残して私はリビングを出て、二階へと上がった。