二本目のビールを半分位まで飲んだ所で、頭の芯がボワンとしてきて。


「んー…、俺は構わないけど…、奏は明日バイトだろ?」

「うん。そうだけど」


トレイに果物と枝豆を乗せた奏がリビングのテーブルにそれを置いて、俺の隣に腰を下ろした。


「バイトは朝早いのかい?」


父さんが枝豆を摘まみながら奏にそう聞いてきて。


「いえ、午後からです」

「だったらもう一日だけ、ね?」


ね?……、って、父さん…


「奏ちゃん、泊まっていきなさいよ、明日午前中にお母さんが送っていってあげるから」


母さんがエプロンで手を拭きながらリビングにやって来て。


「でも…」

「お家の人にはお母さんがお願いしてあげるから」

「いえ、それは…、父は、今日も、多分遅くなるだろうし」

「奏ちゃんのお父さん休日も仕事なの?」

「はい。最近は、ホントに忙しそうで…」

「お父さん、大変なのね。それに比べてうちのお父さんは、毎週毎週、ゴルフ、ゴルフ…」


チラリと父さんを一瞥する母さんに、父さんは慌てて視線を反らす。


「か、奏さんのお父さんは何の仕事してるのかな?」

「建設会社の営業です」

「営業?しかも建設会社の…、それは忙しいだろうね?」

「でも、凄くやりがいがあるって言ってます…」

「そうだね。営業は大変だけど、やりがいはあるだろうね」

「そう言うものなんですか?」

「うん。自力で取ってきた仕事が会社の利益にも繋がるし、その利益で会社全体が成り立っていく訳だから、責任重大。でも、それが達成出来た時の充実感は働く男にしかわからないだろうなぁ」

「あの、佐野君のお父さんは何のお仕事されてるんですか?」

「俺?俺は銀行員だよ」

「銀行員…なんかそれっぽいです」

「ははは、それっぽいかい?」

「はい。お父さん、真面目そうだから、銀行員ってそんなイメージです」

「真面目?これでも昔はやんちゃしたものさ」

「あはは。そうなんですか?」

「うん、バイク乗り回してた」

「静さんや佐野君と同じですね」


楽しげに話す父さんと奏をよそに、二本目のビールを空にして、三本目に手がのびる。