晩飯も食べ終わり、奏は母さんとキッチンで洗い物。
拓也と美樹は二階の兄貴部屋へと連れて行かれ、父さんは風呂から上がると再び晩酌を始めてしまった。
「茜、食べて直ぐに横になると牛になるわよ」
広くなったソファーに寝転んでテレビを見ていると、キッチンのカウンター越しから母さんから窘められ、しぶしぶ身体を起こす。
牛なんかにならないから……
「茜、お前も飲むか?」
父さんが缶ビールを俺の目の前に差し出した。
「は?」
「お前もう17だ、酒位は飲めるだろ?」
「ちょっと、やめてよお父さん、茜はまだ高校生なのよ?」
「俺が高校生の頃は飲んでたぞ?」
「昔と今は違うのよ、茜はまだ子供なんだから…」
母さんのその一言にカチンときてしまって。
「もう子供じゃないよ」
父さんから缶ビールを奪い、音を経ててプルタブを開けると、それを一気に喉に流し込む。
「あっ、こら!茜!」
居酒屋でバイトしてるし、カクテルなんかも作れるけど、ビールを飲んだのは初めてで、口に広がる苦味が喉を通って胃に流れ込んでいく。
500mlの缶ビールを殆ど空にして、大きく息を吐いた。
「お、いい飲みっぷりだ、旨いか?」
正直、旨いかどうかなんてわからない。
「うん。旨いよ」
「はは。だろ?」
「もうっ、お父さん!」
笑う父さんと、父さんを叱咤する母さん、心配気に俺に視線を送る奏。
俺はなんだか急に気分が良くなって、残りのビールを飲み干し、もう一本に手を出した。
「茜、いい加減にしなさいよ?」
「いいじゃないか、母さん、茜ももう立派な男だ、な?茜?」
「うん。もう大人」
「もう…、困った人達ね?奏ちゃん?」
苦笑いする母さんに奏も同じような表情に。
「奏さんも一緒に飲むかい?」
奏にまでビールを勧める父さん。
「え?私も?ですか?」
「うん。母さんもおいで、皆で飲もう」
「ダメよ、お父さん、二人とも今夜帰るんだから、全く…、自分が飲みたいからって…」
「夏休みなんだし、後一日位泊まっても大丈夫だろ?」

