校門で後輩達と別れ、迎えが来るのを待っていると、母さんが迎えに来るのものだとばかり思っていたら、やって来たのは兄貴だった。


母さんが俺からのメールで家を出ようとしていた所で、仕事を終えた兄貴が帰宅し、そのまま家にも上がらずに迎えに来たらしい。


まあ、そんな事はどうでもいいけど。


腹も減ったし、早く帰って風呂入りたい。



家に着くなり奏と美樹は母さんに急かされ風呂場へ直行。


「あれ?拓美ちゃんも一緒に入ってくればいいのに」


兄貴のその一言に、嬉々として風呂場へと向かおうとする拓也に、人知れずデコピンをお見舞いしてそれを阻止。


あまりの空腹に、取り合えず繋ぎのスナック菓子を食べながら、風呂が空くのを待っていると、30分程で入浴を済ませた二人がリビングに入ってきて、入れ替わりで今度は拓也。


え?
一緒に入らないのかって?


別に一緒に入ってもいいんだけどね。兄貴は拓也を女だと思ってる訳だから、変な誤解を招くし、そんな訳にもいかないだろ?


兄貴はソファーに座る奏と美樹の髪を、さすが美容師だけあって、ドライヤー二本を片手に持ち、次々と乾かしていく。


拓也が風呂から上がると、やっと俺の番。


夕食の仕度を手伝い始めた奏と美樹を後ろにリビングを出ると、ゴルフバッグを抱えた父さんが玄関を開けて帰宅してきた。


「あ。お帰り、父さん」

「ただいま」

「風呂、先に入るよ?」


二階に上がり着替えを用意して風呂場へ。


シャワーだけで済まそうと思っていたんだけど、普段は浴槽なんかに浸かったりはしないけど、久しぶりの運動で強張った筋肉を、湯槽に浸かり軽く揉み解す。


アパートの狭い浴槽とは違い、うちの風呂は父さんのこだわりで、俺でも足が伸ばせる位に広々としている。


たまにはのんびり風呂に入るのもいいな。


なんて、親父くさい事を考えていると、腹の虫がけたたましく鳴き出した。


「……腹減った」


ボソリと呟き、ザバンと浴槽から出ると腰骨から下が日焼けしてなくて、肌色の下着を着てるみたいで、思わず吹き出してしまった。