「じゃ。全国大会、頑張れよ?」


体育館の扉を閉めて、まだそこに全員残ってる後輩達を振り返りそう言うと。


「「「「「はいっ!」


元気よく返事が返ってきた。


「なんだ、お前達、まだ居たのか?早く帰れ」


鍵を閉めに来たのか、高田先生が暗がりから姿を見せて、俺達の方に向かって歩いて来ていて。


「お?茜も居たのか?」

「うん。ちょっと、遊んでた、もう帰るよ」

「ははは、またいつでも来いよ?」


……もう、来ないよ。


これ以上バスケやってたら……


また走りたくなる。
もっと跳びたくなる。
気持ちが、持っていかれそうになる。


自分で考えて出した結論だから、十分に納得してるつもりなんだけど、やっぱりコートの上に立つと……


抑えが、効かなくなりそうで……


バスケは好きだ。


でも、それだけに留めておく。


「待ってるからな…」


先生は笑うとそう言って、俺の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。


子供みたいに頭を撫でらてれいるのを後輩達に見られているのは恥ずかしいんだけど、先生のその言葉に応えられない俺は、うつ向き、曖昧に笑う事しか出来なかった。


……先生。


俺からここに来る事はもう無いかも知れないけど、先生指導の基、バスケやってた中学時代がいちばん楽しかったよ。


先生の期待に応える事は出来ないけど、今の俺にはどうしても叶えたい未来があるんだ。


一度バスケから逃げ出ししてしまった俺なんかの事を、今まで気にかけてくれてありがとう。


自身がバスケ出来なくても、バスケに携わってさえいれば、俺はそれで満足。


奏が居れば、それでいい……


「…うん。また来るよ」


先生に嘘をつくのは罪悪感で多少胸が痛むけど、先生は俺ばかりに構ってもいられないだろ?


リョータ達やマサトだって居る。


いつかこいつ等が先生の夢、必ず叶えてくれるよ。


だから俺は、奏とずっと一緒に過ごせるような未来を、これから作り上げていくんだ。