坂道を上り、高台に位置する学校にたどり着き、携帯で時間を確認すると18時。


日は傾いてきていたけど、真夏の暑い陽射しは衰えることがなくて、まだまだ日中と変わらない位の熱を放っていた。


私達が体育館近付くと、バッシュで床を擦る音が響いていて、中に入るとリョータ君達は既にボールを弾きながらコートの中を走り回っていた。


「佐野先輩!バッシュそこに用意してますから、使って下さい」


リョータ君がそう言って、見ると体育館の入口のすぐ横にバッシュが二足用意されていた。


佐野君と拓也君はバッシュに足を通すとコートの中へ。


私と美樹ちゃんは邪魔にならないように、ステージの上へと移動し、そこに腰を下ろした。


一年生の子達が佐野君達にビブスを配っていて、佐野君と拓也君は同じ赤で、マサト君も同じ赤


対する白のビブスはリョータ君達三年生。


佐野君と拓也君はアップもかねて、ドリブルで軽くコートの回りを走り出した。


タンタンとボールが弾む音と、キュッキュッとバッシュが床を擦る音が体育館に響き渡る。


アップも終りそれぞれ中央に整列。


お互いお辞儀をして、位置につく。


中央に出て来たのは佐野君とリョータ君。


二人は笑いながらも軽く睨み合う。


「手抜きしないよ?」

「望むところです」


ホイッスルの音と共に審判が高くボールを上に放った。


二人は高くジャンプする。


けれどリョータ君は佐野君の高さには及ばず。


−−パシッ!


乾いた音がしてボールは佐野君の掌で弾かれた。


一斉に皆が動き出す。



目の前でバスケットをする佐野君を見られるのも、これで最後かも知れない。


しっかりと見ておかなくちゃ。


いつでも思い出せるように。


心のメモリーにしっかりと。