「あれ?佐野君寝ちゃってんの?」
「…うん。もうぐっすり」
あれから佐野君はすっかり熟睡してしまっている様子で、二時間位は経過してしまったんじゃないだろうか。
今一体何時位なんだろ?
時間を確認しようにも携帯もデジカメもロッカーの中だし、動けばせっかく眠っている佐野君を起こしてしまいそうで。
「美樹ちゃん一人?拓也君は?」
「拓也はあっち」
指差す美樹ちゃんの方向に目を向けると、拓也君はバスケ部の皆とまたビーチバレーをやっていて。
「ポチは元気よね…さすが犬…」
「ぷ…、犬って、美樹ちゃん」
「かなちゃん、喉乾かない?あたし買ってきてあげる」
約二時間、パラソルの下とは言え、ずっと座りっぱなしの真夏の海岸はじっとしていても汗ばむ程で、正直喉がカラカラだった。
「うん。ありがとう、私、烏龍茶、あ。佐野君にもスポーツドリンク、お願い」
「わかった」
海の家へと向かう美樹ちゃんを見送りながら、そのまま視線をバレーコートに移すと、さっき私と美樹ちゃんをナンパしてきた男の人達も、いつの間にかリョータ君達とビーチバレーをやっていて、なんだかすっかり仲良くなってるみたい。
随分日も傾いてきたな。
人も来たときより少なくなってきたし。
佐野君起こすの可哀想だけど、そろそろ帰らないとね。
「佐野君、起きて」
肩を軽く揺すってみると、佐野君はゆっくりと目を開けて。
「……ん…」
「ごめんね?眠いだろうけど、そろそろ帰らないと…」
「………、今、何時?」
「わかんないけど、多分17時位じゃないかな?」
「え?もうそんな時間?」
佐野君は身体を起こすと。
「ずっと、膝枕しててくれたの?」
「え?…、うん」
「ごめん、遊べなかっただろ?」
そんな事…、佐野君の寝顔ずっと独り占め出来て、私嬉しかったから。
「ううん、あまり日焼けしたくなかったから、気にしないで」
申し訳無さそうに私を見る佐野君に、出来るだけの笑顔を向けて私はそう答えた。

